人生のピークを過ぎて坂を下る時期、頭の切り替えが求められる時期
成人期中期
成人期中期はだいたい45歳から65歳までの期間をいいます。
成人期前期の上り坂にたいして、成人期中期は人生のピークを過ぎて坂を下る時期にあたります。
この時期に求められる「頭の切り替え」はそんなに簡単なことではありません。
特にサラリーマン男性の場合は、スムースに頭の切り替えができる人の方がむしろ少数派かもしれません。
きわめて個人差のおおきい時期であるとともに、ここでつまずく人が結構出るかもしれない、意外に危険をはらんだ時期ということができます。
坂を下る
これまでひたすら「成長」、「拡大」、「達成」することへと向けられてきた関心が、「衰退」や「終焉」などの有限性にも向けられなければならない時期です。
まず、加齢にともなう肉体的な衰えが始まり、多くの方が両親との死別を体験します。
仕事面では多くの人が定年を迎え、家庭においては子供の巣立ちがおこり、夫婦関係は新たな局面を迎えます。
ひととの関係性が変われば、期待される役割もおおきく変わってきます。価値観や信念も変わってきますし、あらゆる面で視点や発想の転換が求められます。
この時期、多くの人が人生の目的や価値観について改めて考えることになります。
発達課題
この時期の発達課題は、
(1)さまざまな衰退や終焉に向けた変化に対応できるようなバランスのとれた人格と柔軟な考え方を形成すること、そして、
(2)自分に期待される役割の変化にうまく対応すること、だと思います。
ひとは、職場や家庭において自分が果たすべき役割がおおきく変化していることを理解すると共に、そうした周囲からの役割期待の変化にうまく対応していかなければなりません。
これまでのような自己を中心とする社会関係や自らの成長をめざす視点から、部下や他者の成長や社会の発展にいかに貢献できるか、といった「新たな視点への転換」などが求められます。
発生する諸問題
定年にともなう社会性の変化、子供との関係の喪失にともなう新たな夫婦関係、身体的変化、喪失に伴う再構成など、対応が難しい状況変化がいろいろ起こります。
その状況変化に応じて、ひとそれぞれに期待される役割もおおきく変化します。
成人期前期の発達課題である「親密性づくり」がうまくいっていないひとや、「仕事に逃げる形で家庭を妻にまかせっきり」にしていたような男性にとっては、この時期かなりの努力が求められることになります。
家庭や職場における役割期待の変化に適応できない場合には、深刻な不和や問題が生じたりします。
60歳の定年までじっと我慢してひとつの会社を勤め上げたサラリーマン男性が、定年を機に「もう我慢しないで自由に生きていくぞ!」 という気持ちになることがあります。
それはそれで大切なことなのですが、成人期前期の発達課題「親密性づくり」や中期の発達課題「バランスのとれた人格と考え方」が達成できていないと「糸がきれた凧」のようになって周りとトラブルを起こすことになります。
たいせつなひととの辛い死別を経験した方の中には、その事実をいつまでも受け入れられずに生きる気力を失う方もでてきます。
子供が自立したあとの喪失感に対応できない「空きの巣症候群」や、加齢に伴う更年期障害(更年期不定愁訴症候群)なども生じます。
熟年離婚という言葉もよく耳にします。 長い間結婚生活を続けてきた夫婦がいろいろな事情から成人期中期にいたって離婚する場合です。
離婚は、特に日本の経済社会的制度のもとでは、いろいろな問題を生みだします。熟年離婚を少なくするためにも、役割期待の変化に対応できるような「バランスのとれた人格と考え方」を身につけることがたいせつと思います。
総じて、この成人期中期は、社会関係や対人関係の再構築を支援する対人関係カウンセリングの必要性がもっとも高まる時期といえるでしょう。
青いそら 干場
【注】他方で、「一度しかない人生だから自分らしく生きていきたい」という気持ちもたいせつにしなければなりませんが。
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